Q&A

2026.1.30

【Q&A】023 高齢院長の明日への備え

私は診療所の院長ですが、だいぶ歳を取ってきました。将来、私が病気などで急に倒れたり、認知症を発症した場合の診療所の閉鎖に関する事務を適切に行うために必要な準備をしたいと思っています。どのように進めたらよいですか。

 

 

 

院長先生がご健勝なうちに、将来の「もしも」に備えようとされる姿勢は、ご家族、従業員、そして地域の患者様への誠実な責任感の表れであり、非常に重要です。

円滑な閉院準備(ハッピーリタイアメントまたは有事の備え)は、以下のステップで進めるのが理想的です。

 

 

1.現状の可視化(棚卸し)

まずは、診療所の法的・財務的な契約状況を整理します。顧問の税理士事務所や弁護士事務所の力を借りて賃貸借契約、医療機器リース、従業員の雇用条件、未収診療報酬の状況などを一覧化しておくことが閉院準備のために有効です。

 

2.「任意代理契約」と「任意後見契約」の締結

判断能力があるうちに、信頼できる弁護士などの専門家と以下の契約を結び、公正証書にしておくことが最も確実な備えとなります。

 

●任意代理契約: 病気や怪我で動けなくなった際、院長先生の代理人として事務手続き(給与支払や解約交渉)を代行してもらうことが可能となります。任意代理契約は契約を締結できる判断能力がある人でなければ契約書に調印できないので、病気や怪我で判断能力が低下した後には契約を締結することができません。

 

●任意後見契約: 認知症などで判断能力が低下して後見人を選任しなければならない状態になった場合、任意後見契約の効力を生じさせるため家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立て、任意後見人に閉院手続きや財産管理を託すことになります。

 

➤任意後見契約と成年後見制度の違い:任意後見契約では将来後見人となってもらう人を院長先生が予め指定しておくことができますが、成年後見制度の場合は、裁判所が後見人を選任することになるので、院長先生が全く知らない人が後見人に就任することとなります。

 

3.死後事務委任契約の検討

万が一、手続きの途中で逝去された場合に備え、葬儀や残務整理、カルテの保管管理などを託す契約です。

 

4.遺言の作成

万が一の時に備えた、診療所に関する物や権利も含めて院長先生の財産を誰に託すかを記載した遺言書という書面を作成することができます。遺言書は何回でも書き換えることができます。遺言書を作成することで相続人間の争いを抑止することができます。

 

 

~法律家による伴走の必要性~

診療所の閉鎖には、医師法、労働基準法、民法、税法など、多岐にわたる専門知識が必要です。そして、任意代理や任意後見の契約、遺言書の作成などについても法律家による支援を受けることで将来の老後に向けた万全の体制を構築することができます。

 

将来の診療所の閉鎖に向けた準備は弁護士法人海星事務所までご相談ください。